景気循環の頂点では、低いPERが注意点になる
株価を利益で割ったPERは、選んだ利益の分母に対していくら払っているかを表す。しかし、それだけで価値が分かるわけではない。メモリ企業は供給が不足して販売価格が高い年に、大きな利益を報告することがある。その利益を永続的な分母にすると、正常な利益へ戻る直前に株が割安に見える。逆に不況期の低い利益を分母にすれば、将来回復する事業のPERが高く見えることもある。表示された倍率の小ささを順位付けする前に、どの条件なら利益が持続するかを説明する。
サンディスクの年次報告には年度ごとの実績と市場別構成があり、AAOIの報告には光製品の売上、投資、現金の使用がある。循環の影響と資金の構成は同じではなく、二社をAI関連という分類だけで一つの倍率にまとめられない。FINRAの説明は比率の言葉を理解する入口になるが、以下の正常利益の計算は筆者が作った練習用のモデルで、特定企業の予想ではない。
利益を事業の前提から作り直す
仮想的なメモリ会社で、供給不足の年の売上を1,000、粗利率を45%、営業費用を150とする。営業利益は300になる。税率を仮に20%とすると税引き後利益は240。株式価値が3,000ならPERは12.5だ。しかし粗利率を正常な25%へ戻し、売上と営業費用を同じにすると、営業利益は100、税引き後利益は80になる。株式価値が同じならPERは37.5だ。最初に見えた割安さは、45%の粗利率が続くという前提に依存していた。
次に数量だけを減らし、価格を固定する。その後、価格だけを下げる。最後に単位原価と設備の稼働率を変える。弱気ケースという一つの箱に五つの変更を隠さず、どの要因が結果を支配するかを見るためだ。NANDでは出荷した容量と容量当たり価格の定義を揃える。企業向けSSDの売上と、生のビット出荷を同じ単価として扱わない。HBMでは認定された積層製品の供給やパッケージの歩留まりも関係するが、その採算をNAND企業へ直接移してはいけない。
利益の質と再投資を、現金まで追う
利益を平準化しても、評価はまだ終わらない。現在の競争力を保つために装置の交換、顧客向けの技術対応、在庫などが継続して必要な場合がある。減価償却は会計上の費用配分で、設備購入は実際に発生した現金取引だ。設備を直接保有するほか、合弁会社や関連する契約を通じて生産を支えることもある。設備購入の一行だけを見て、製造能力の維持に必要な資金をすべて把握したと思わない。合弁への拠出、契約上の義務、購入約束もキャッシュフローと並べて読む。
仮想会社の正常利益が100、非現金の減価償却が40、設備購入が70、追加の運転資金が20なら、単純化した残りの現金は50になる。他の調整を省いた教材用の橋渡しであり、正式な財務諸表の項目ではない。株主に配れる利益だと思っていたものが、維持投資で消えるなら、低いPERはバリュートラップになり得る。一時的な投資で現金が減っていても、将来その投資が資金コストを上回る利益を継続して生むなら、結論は変わる。どちらなのかを区別するために、操業の証拠が必要になる。
株価から必要な事業成果を逆算する
適切な倍率はいくつか、とだけ考える代わりに、その価値を正当化するには何が必要かを問う。仮想の株式価値4,000を正常PER20で説明するなら利益200が必要になる。純利益率10%なら売上2,000が必要だ。希薄化後株数が1億株なら一株の価値は40だが、株数が1億2,000万株へ増え、株式価値が変わらないなら一株では約33.33になる。これは条件を見えるようにする計算で、SNDK、BE、AAOIの目標株価ではない。
保守的、標準、好ましいケースそれぞれに、製品構成、利益率、必要投資、希薄化後の持分を書く。貸借対照表では、資金を確保して弱い期間を乗り切れるかを確認する。持続する利益の見積もりと矛盾する観測も先に決める。業界の成長テーマが魅力的でも、株価が高すぎる場合はある。倍率が低くても、投じた資本の収益性が悪化している場合はある。バリュー投資の調査は、その差を証拠によって説明する作業だ。
読み取りの練習と、評価を止める条件
一社の二つの終了済み会計期間を選び、実際の売上、粗利率、営業費用、営業キャッシュフロー、生産への資金約束を書き出す。別の列に正常化した値を置き、すべて仮定だと分かるようにする。結論が最も敏感な一つの前提を特定する。生産に必要な資金や希薄化後の株数を説明できなければ、評価は未完成として止める。分母の定義が曖昧なまま小数点以下を増やしても、理解の精度は上がらない。
正常利益は単純な過去平均とも違う
五年間の利益が20、40、100、200、40だったとして、算術平均は80になる。しかし設備の能力、製品の構成、負債が期間中に変わったなら、80が将来の正常利益を表すとは限らない。平均は循環の振れを抑える道具であり、構造変化を説明する代わりではない。新製品が利益の質を変えたという仮説なら、何が継続し、何が一時的なのかを事業の指標で示す必要がある。
仮想モデルの売上を10%下げた時と、粗利率を五ポイント下げた時の結果を別々に書く。営業費用が固定されているほど、粗利益の変化が営業利益へ大きく伝わる。借入利息も固定に近いなら、株主に残る利益の変動はさらに大きくなる。この感応度を知ってから倍率を読むと、安いという言葉に含まれる前提を具体的に説明できる。
VALUATION / 仮想的な入力
一つの前提で、評価はいくら変わるか。
仮想モデル:現在の年間現金500百万、負債1,000百万、現金200百万、希薄化後100百万株。EV = 現金 × (1 + g) / (r − g)、株式価値 = EV − 負債 + 現金。直ちに永久成長する仮定で移行期間や他の請求権を省きます。特定企業の入力や目標株価は使っていません。
出典
01自分のノート